浮世絵用語集
あ
- 藍(あい)
- 藍の葉から生成したもの、藍染めの布から作られたもの
露草の花の汁から作られたもの
ベロ藍と呼ばれる化学染料がある - 藍摺絵絵/span>(あいずりえ)
- 藍一色で刷った絵を指す
水野忠邦の政策によって極彩色の錦絵が禁止になり生まれた物 - 間判(あいはん)
- 大錦と中判の間 大きさものをいう
- 赤 (あか)
- 紅花の花弁から取ったもの・・・紅
水銀を焼いて作る・・・朱
鉛を使った・・・丹
鉱物性の赤などが使われた - 赤絵(あかえ)
- 赤は高級な色 だったが明治以降鉱物性の赤などが安く入ってきため
赤を大量に使う絵が一時流行した。 - 当てなしぼかし(あてなしぼかし)
- 空や水面に浮かぶ雲のようなぼかしを
何も彫らない平面の板の上に雲の形を描くように刷毛で摺り上げる - 後摺 (あとずり)
- 初りからしばらく間があって再版されたものを指す
同じ版木から摺られたものをいう - あぶな絵(あぶなえ)
- 男女の営みや裸体を描いたもので春画と違い秘部が見えないものを指す
- 改印(あらためいん)
- 極印ともいう。
寛政の改革で事前検閲が必要になり、検閲済みの証にそれが押されるようになった。
改印によって年代を知ることができる
- 石摺絵(いしずりえ)
- 拓本のように白と黒 で作られたもの
西川重長の創案と言われている。白黒逆転の効果を狙った作品 - 板ぼかし(いたぼかし)
- 木版技術における色ぼかしの方法
- 一文字ぼかし(いちもんじぼかし)
- 一の字を書いたようなぼかし
- 伊予奉書(いよほうしょ)
- 越前奉書の代用品 天保年代から作られる
- 伊予柾紙(いよまさかみ)
- 奉書の代用品だが、安手の浮世絵に使われた
- 色板(いろいた)
- 木版の色摺り用の版木 色の数だけ必要になる
墨板を作った後、それを元に色の部分だけのものが作られる - 色差し(いろさし)
- 古い浮世絵で色の抜けたものに後の時代に筆で色を入れることを言う
- 色刷り(いろずり)
- 沢山の色を摺った多色版画のことをいう
浮世絵は他に類をみない多色摺の版画である - 岩絵具(いわえのぐ)
- 肉筆浮世絵に使われる。岩石や宝石を砕き膠で貼り付ける絵の具
- 印象(いんしょう)
- 肉筆に署名をしてそこに押される判子のことをいう
- 浮絵(うきえ)
- 浮き出ているように見せる遠近法で書かれている版画
- 薄墨絵(うすずみえ)
- 墨摺りで濃淡を使って描かれた作品。栄之、英山などにある
- 団扇絵(うちわえ)
- 団扇に貼る絵。破れたりした場合、張り直して使用していたため団扇絵売りがいたようである
使用されて無くなってしまったものが多く、使用していない団扇絵は非常に貴重である - 裏ゆき(うらゆき)
- 浮世絵の鑑賞の用語で、裏の状態を指す。裏側の色の抜け具合などを見ることをいう
- 漆絵(うるしえ)
- 初期浮世絵の一種の様式を指す
墨刷りから丹彩、紅摺りの次に生まれた描き方。墨に膠を交ぜ、漆のようにみせる描き方の絵
- 絵暦(えごよみ)
- 大小暦とも言い略歴の一種
その年を大小の月が一目でわかるように絵の中に書き込んだ絵 - 絵草紙(えぞうし)
- 錦絵のこと、絵を主体にした冊子のこともいう
- 蝦夷絵(えぞえ)
- 北海道と樺太を蝦夷といい、その風俗を描いたもの
アイヌ絵もその一部 - 江戸土産(えどみやげ)
- 浮世絵は江戸の特産品として、軽くかさばらないので土産品として人気があった
- 絵半切(えはんぎれ)
- 薄彩色の絵を摺った書簡用箋のことをいう。消耗品のため残っていない
- 大首絵(おおくびえ)
- 半身または顔面を主とする絵の総称
- 大短冊(おおたんざく)
- 大奉書を三つ切りにした大きさ
- 大津絵(おおつえ)
- 近江の国大津の粟田口辺で売った名物画
- 大錦(おおにしき)
- 大判の錦絵のこと。大判奉書二つ切の大きさ
- 玩具絵(おもちゃえ)
- 子供の手遊び用に描かれた版画
子供の享楽のため大名行列、台所道具などや疱瘡絵、凧絵、細工絵など - 主版(おもはん)
- 墨線版のこと、線画で描かれており最初に作られる基本の板
- 角刷物(かくすりもの)
- 角判の摺り物を指す
- 影絵(かげえ)
- 写絵ともいう。影法師を使って描きおもちゃ絵として出されたりした
- 掛物絵(かけものえ)
- 大錦を竪2枚つなげて描かれたもので表具され、掛け軸として楽しまれた
英山から始まり、竹籤に紙表具で売られ、軽いのでお土産として人気を博した - 合羽刷(かっぱすり)
- 主に上方絵に使われた技法
木版を使わず渋を引いた型紙を色版として刷毛で絵の具を塗りつけたもの - 上方絵(かみがたえ)
- 江戸で作られた版画を江戸絵と言い京阪で制作されたものを上方絵という
- 硝子絵(がらすえ)
- ビードロ絵とも言いガラスの裏側に油絵の具や泥絵の具で描いたもの
- から摺(からすり)
- 模様を無色で刷りエンボス模様を付ける技法
- 戯画(ぎが)
- 滑稽な絵や道化絵などを指す
- 擬人絵(ぎじんえ)
- 動物や物を人間のように描いた絵、ミッキーマウスも擬人絵である
- きめ出し(きめだし)
- 浮き上がって見えるように膨らませて摺る技法
- 校合摺(きょうごうすり)
- 浮世絵を作るときに墨版の版木が作られるが、それを摺ったものを校合摺りという
- 雲母摺(きらすり)
- 雲母の粉を膠で摺る摺り方 、銀雲母、黒雲母、紅雲母、白雲母などがある
- 極め印(きわめいん)
- 改印のことを指す、検閲済みの証でそれにより制作年代がわかる
- 源氏絵(げんじえ)
- 源氏物語を題材とした絵の総称。田舎源氏によって歌舞伎も舞台にし大流行した
浮世絵においても源氏絵を描かなかつた絵師はいないほどの人気を博した - 見当(けんとう)
- 版画制作の基本技術
板に印をつけ色板にも、同じ位置に印を付けることによってずれないようにする工夫
見当をつけるという言葉が現在も残っているが、ここから来ている
- こま絵(こまえ)
- 絵の中にあるカット、小型の窓を作り、そこに絵と関係がある風景を描いたり物を描いたりしたもの
- 胡粉(ごふん)
- 牡蠣を粉末にした白色絵具
- 挿絵(さしえ)
- 版本の挿絵や明治以降の本の付録も挿絵という
- 鞘絵(さやえ)
- 刀の鞘に映してみるとちゃんと見えるように書いた絵
- 仕上げ(しあげ)
- すっかり摺り上がった版画を摺り師は見当の部分など化粧裁ちする
これを仕上げという - 仕掛絵(しかけえ)
- 絵に何らかの仕掛けを施し、一部に異なる絵を貼り付けめくると違う場面にしたりする。
子持ち絵ともいう - 下絵(したえ)
- 版画を絵師が描く場合彫師に渡す絵は版下絵というが
下書きをする絵を下絵という - 地潰し(じつぶし)
- 絵の余白を全部摺ること。黄色で摺れば黄潰しという
- しとり
- 礬水(どうさ)を引いて準備ができた用紙20枚に1枚のペースで水に浸した紙を挟む
摺り上がりに適した水分補給で行う - 死絵(しにえ)
- 追善絵ともいう。著名な人物がなくなったとき肖像画を描き偲んだ
- 芝居絵(しばいえ)
- 歌舞伎の役者絵を指す
- 字彫(じほり)
- 筆耕彫といい、文字を彫る専門の彫師がいる
- 紙本(しほん)
- 掛け軸などの肉筆を描く時<紙に書く場合紙本という
- 地本(じほん)
- その土地で出版される本を示す
- 地本問屋(じほんとんや)
- 版木で地本を作り売る店のこと
- 初摺(しょずり)
- 一杯、約200枚を初摺り、摺りぱなし、板おろしともいう
- 新版画(しんはんが)
- 浮世絵と同じ工程で絵師、彫り師、摺り師の分業で作られた版画
- 正面摺(しょうめんすり)
- 上面摺り、つや摺りともいう。
絵は着色した版木の上に紙を載せ紙の背面を摺って色を付ける。
正面摺りは摺りあがった色面に合わせて文様などを彫った「正面板」を用意し
正面板の上に摺り上げた作品の表を上にして置き
バレンやヘラなどでこすることで正面板の形を浮き立たせていく。
この摺りは光沢が出るのでつや摺りともいう。
- 双六(すごろく)
- 振り出しからサイコロの目で進み、早く上がりにたどり着くと勝ちという遊び
- 墨(すみ)
- 地墨とつや墨がある
地墨は一般的な摺りの墨だが、つや墨は礬水や姫糊を混ぜ二度三度摺り艶を出すことをいう - 墨板(すみいた)
- 墨をするための版木
- 墨絵(すみえ)
- 墨一色で描いた版画のこと
- 相撲絵(すもうえ)
- 相撲の力士や相撲関係の絵の総称。
春章に代表される勝川派以降に多く描かれるようになった - 摺り師(すりし)
- 黒摺り師と、色摺り師がいる。浮世絵における摺り師の占める割合は大きい
- 摺りっぱなし(すりっぱなし)
- 最高の保存状態を指す。摺った時のままの状態で保存されている作品
- 摺り抜き(すりぬき)
- 版木を節約するため、色板を一面に二色以上の部分を彫ることを指す
- 摺物(すりもの)
- 販売用でなく、正月に狂歌などを書き添えて配り物として絵師に頼んで制作されたもの
浮世絵の発展とともに正月以外にも作られ
厚奉書に金銀を使い凝って豪華なものが制作されるようになった。角判で制作されたものも多い
- 戦争絵(せんそうえ)
- 武者絵や日清日露戦争などの絵を指す
- 雑巾ぼかし(ぞうきんぼかし)
- 水雑巾を使ってぼかし摺りを行うこと
- 創作版画(そうさくはんが)
- 現代版画で、彫り摺りも作家が行う版画のこと
- 蔵書印(ぞうしょいん)
- 自分の所蔵品に捺印した印、有名なところでは狂斎や年方などの絵師のものもある
林忠正や若井おやぢなど当時の貿易商のものもある - 揃い物(そろいもの)
- シリーズ物を指す。5枚、7枚、12枚、16枚、24枚、32枚、36枚などがある
- 丹絵(たんえ)
- 初期の版画で墨絵に丹、緑、黄色を手彩色で色を付けたもの
- 短冊絵(たんざくえ)
- 短冊形の紙面に摺られた版画
- 血みどろ絵(ちみどろえ)
- 幕末から明治にかけて、殺戮シーンで血がほとばしる絵のことをいう
特に膠を溶いて光沢のある地を表現したものがある - 茶箱絵(ちゃばこえ)
- 我が国の輸出品目に生糸とお茶があり,お茶の箱に装飾として付けられた絵
- 中短冊(ちゅうたんざく)
- 奉書を四つ切りにしたサイズ
- 中判(ちゅうばん)
- 大錦の半分のサイズ
- 縮緬絵(ちりめんえ)
- 普通に作られた大錦を棒に巻いて揉んで少しずつ縮めていき、はがきサイズぐらいにしたもの
- 追善絵(ついぜんえ)
- 死絵のこと、死絵参照
- 接ぎ板(つぎいた)
- 役者絵のように興行に合わせ版画を出さなければいけないとき、
一枚の版木を2つ、3つに分けて手分けして彫り接ぎ合わせて使用した
例えば一人で彫れば3日掛かる仕事を1日で済ますことができた - つまる
- 浮世絵の状態を指す言葉
浮世絵の出来た時のサイズから切られてしまって小さくなったこと - 艶墨(つやすみ)
- 頭髪や綸子の帯などを摺るとき光沢のある墨を用いるが、それを艶墨という
つや墨は礬水や姫糊を混ぜ二度三度摺り、艶を出すことをいう
- 手を入れる(てをいれる)
- 保存の悪くなった浮世絵を修繕すること。色を指したり虫穴を埋めたりすること
- 手漉き和紙(てすきわし)
- 日本伝承の和紙制作法による紙
- 手摺(てずり)
- 機械摺りに対して、人が手でする摺り方。浮世絵はすべて手摺である。
複製の中には機械摺りもある。 - 天保の改革(てんぽうのかいかく)
- 天保12年老中水野忠邦によって行われた改革
武者絵、風景画に地名、相撲、役者、遊女の名を記することの禁止、錦絵は三枚続きまで、
彩色は7,8摺りまで、値段は一枚16文以下などが行われた
- 道中双六(どうちゅうすごろく)
- 振り出しの日本橋から上がりの京都まで賽の目によって進んでいく遊び
- 胴彫り(どうほり)
- 主版を作る時、人物画の頭を彫る頭彫りは顔や頭髪や手足を彫る
それ以外を彫る彫り師を胴彫りという - 泥絵(どろえ)
- 粗悪な顔料に胡粉を混ぜ不透明な泥絵の具で描かれた絵
- 長絵(ながえ)
- 柱絵ともいう
- 長大判(ながおおばん)
- 初期の版画に大大判といわれている。丹絵、漆絵にある
- 中折れ(なかおれ)
- 版画の中央にある折れ目のこと
一度折れてしまうと治らないので欠点として価値が下がる - 長崎絵(ながさきえ)
- 長崎派の版画のことをいう。絵柄は出島に関する西洋のもの
- 鯰絵(なまづえ)
- 地震と関連した絵で、当時は鯰が暴れると地震が起きると思われていた
- 錦絵(にしきえ)
- 上方の丹絵や漆絵、紅摺り絵より錦のように美しいので東錦絵と呼ぶようになり、
東はいつの間にか略され錦絵というようになった - 錦絵新聞(にしきえしんぶん)
- 錦絵と新聞の良いところどりをした物。
報道内容を絵柄に入れて読みやすくした - ニス引き(にすびき)
- 清親の版画にワニスを引いて光沢を出し油絵のような表現になること
- 布目摺り(ぬのめすり)
- 摺り技法のひとつ、潰しに彫ってある板に紗か絽を貼って摺って布目を表す
- 鼠つぶし(ねずみつぶし)
- 版画の背景を鼠色で摺った作品
- 能画(のうが)
- 能、狂言を題材にした絵
- 覗眼鏡(のぞきめがね)
- 浮き絵を入れて覗く機械
- 箔摺り絵(はくすりえ)
- 金銀摺りをした絵、金銀箔は使わず金銀泥を使う
- 刷毛(はけ)
- 浮世絵版画用の刷毛は色ごとに用意し、大小もあるので大量の刷毛がある
- 化け物絵(ばけものえ)
- 化け物を題材にした絵
- 箱書(はこがき)
- 掛物絵の箱の表に画題を書き、裏に作者の落款などが書かれたものを共箱という
- 柱絵(はしらえ)
- 奉書を横四つに切った大きさ
- 嵌木(はめぎ)
- 版木とは別の木を嵌め込み彫りなおすこと
- 貼交絵(はりまぜえ)
- 一枚物の版画紙面を3から8種類に区切り、組み合わせて別の絵を描く手法
- 馬連(ばれん)
- 版画制作に重要な道具。馬連を使って版木に塗った色を紙に転写する
- 版材(はんざい)
- 浮世絵版画に用いる版木は桜の木が一番適してる
- 判じ絵(はんじえ)
- 絵によって、意味を読み取る遊びを指す
- 版下(はんした)
- 版下絵のこと。墨だけで描かれた絵で、それを版木に貼って彫り、版画を作る
- 番附(ばんづけ)
- 相撲番附から始まり役者番附などがあり、人気ランキングのようなもの
- 版元(はんもと)
- 版本や錦絵などを出版販売する本屋
- 版元印(はんもといん)
- 版元が自分の出版物であることを示す屋号の印
- 版本(はんぽん)
- 版で作られた本
- 火消し絵(ひけしえ)
- 火消しを描いた版画
- 古板(ふるいた)
- 使用済みの版木を削って再び使うことで、ゆがみ、反り、割れなどがなく日常的に行われた
- 紅絵(べにえ)
- 丹絵に次いで生じた版画。漆絵と同一に扱われる
- 紅嫌い(べにぎらい)
- 寛政時代に紅を使わず紫、薄墨、黄などで彩色した絵を指す
- 紅摺絵(べにずりえ)
- べにえを摺りで色を摺った物を指す
- ベロ藍(べろあい)
- 舶来の藍でベロリンと言い、文政12年ごろから使われる
- 疱瘡絵(ほうそうえ)
- 紅一色で鍾馗などを描き摺られ、疱瘡の流行時のおまじないのために飾った絵
- ぼかし
- 版画で濃淡をする技術
- ポンチ絵(ぽんちえ)
- 西洋の人形芝居をポンチといい、滑稽な絵を指す
- 見立絵(みたてえ)
- 古典、古賀、説話を題材として、人物を当世風俗とした作品
- 密画(みつが)
- 細密画のこと
- 虫干し(むしぼし)
- 土用干しとい って、夏の土用に風に当て日光にさらし虫の付くのを防ぐ
- 武者絵(むしゃえ)
- 甲冑姿の武者を描いた絵
- やれ
- 刷りを失敗したりして、ちゃんとした完成品で無い絵を指す
- 両面絵(りょうめんえ)
- 両面刷りで作られた版画で、一面に人物の面を描き、その裏に後ろ姿を描いたもの。
歌麿の高島おひさが有名である
- 蝋摺(ろうずり)
- 国芳の中判や柳村の版画に光沢のある油絵のように見せる技法で
蝋を引いてある作品
- 若書き(わかがき)
- その作家の修行時代や若い頃に描いた絵を指す